2015.11.12

ソロ女子のブルックリンは
東京都北区赤羽にあった!独身女性が選ぶ
好きな街ランキング(後編)

ソロ読者50名に実施した「東京で今一番好きな街」のアンケートをもとに、
ライター・速水健朗さんが“おひとりさま”のリアルに迫る後編です。

政治、経済、文化、食など、さまざまジャンルを独自の視点で切り取るライター・速水健朗さんに、“おひとりさま”ついて考察していただく本連載。東京近郊在住の独身女性50人に、今一番好きな街を調査した前編では想像以上にオーソドックスな街のラインナップとなりました。後編となる今回は、それ以外にランク入りした街についても触れながら、おひとりさまの本懐をお伝えします。

三茶でも恵比寿でも豊洲でもない おひとりさまが注目する街とは?

速水健朗 おひとりさま 東京で一番好きな街

前編で取り上げていない、ランク入りした街についても触れていこう。恵比寿・中目黒・代官山界隈は、エリアごとのランキングでは、「新宿エリア」「表参道・青山」に次いでの3位。カフェやバー、レストランといった飲食店の充実度で知られる恵比寿は、断トツ人気と思いきや、今どきは、そこまで人気のスポットではなくなっているのかも。そういえば、最近は客層の高齢化が目立つ気がする。単価的にも安くはない店が多いせいもあるだろう。

 一方、バブル世代やその少し下のアラフォー世代にもおなじみの「表参道・青山」エリアの人気は高い。一時はブランド力が下がっていた骨董通りも復活の兆しがある。TYハーバー系列レストラン(*1)の人気は今だ高く、予約無しでは入れない状況が続く。街そのものというよりは、店のブランドで成り立っている部分も大きいのかもしれない。

(*1)TYハーバー系列レストラン 醸造所を併設した、天王洲地域のランドマーク的存在の「T.Y. Harbor Brewery」を本拠にしたレストラングループ。表参道にある環地中海料理店「CICADA」は、目の前に運河が広がる本店よろしく水の流れるコーナー近くの席が大人気。ただ、デート利用の多い同レストランの風景を“借景”しつつ、サラダやパンを飲食できる併設のオールデイカフェ「crisscross」の方がおひとりさまとしては使い勝手がいい。

飲みに誘うなら「中目黒」よりも「赤羽」がコスパ良し?

その逆に、アッパーではない街として上位に入ったのは、「赤羽」。「人生気楽にやってこーってな気分にしてくれるような、気取らない空気が大好き」というのは、この街が気に入って住んでしまったという広告代理店勤務の30歳の女性。昼間から飲めるゆるい街。昨今の「赤羽・立石」ブーム(*2)の主体も、間違いなく女性客である。「たまに知らないおじさんがおごってくれる」などという声も上がっていた。

 都心でナンパされるよりも、ひなびた街の情緒みたいなものに今どきのアラサー世代が惹かれるというのも、ありそうな話である。ちなみに男性がデートに誘う場合も、「中目黒行こうか」よりも「赤羽行こうぜ」の方が有効(*3)であるというのは、ほぼ間違いないだろう。

(*2)昨今の「赤羽・立石」ブーム 東京都北区にある赤羽と葛飾区にある立石。下町情緒あふれるこの2つの街は、5000円ほどの予算でも約3軒ははしご酒できるという好環境から最近、“飲兵衛の聖地”として注目が集まっている。昼間から呑んでいるおじさん達の横で、女性おひとりさま客が痛飲しているという風景も珍しくもなくなってきている。

(*3)「六本木行こうか」よりも「赤羽行こうぜ」の方が有効 昨今の赤羽をめぐる動きとして見逃せないのが、赤羽在住の漫画家・清野とおるが体験した赤羽の奇人・変人エピソードが満載の『東京都北区赤羽』をもとに、山下敦弘監督と松江哲明監督がドキュメンタリードラマ化した「山田孝之の東京都北区赤羽」(テレビ東京系、2015年)の放送。「東京ドラマアウォード2015」も受賞した同作の放送以来、サブカル層を中心に赤羽は観光地化した面も。

新丸ビルやコリドー街もいいけれど… 疲れに染み入る街は他にある

さて、筆者は、毎週金曜日にはどこかの繁華街にアベノミクスのフィールドワークに出かけるということを、もう2年以上続けている。しかし、その中で気になっていた勢いを感じる街で、今回のランキングに登場しなかった街も多々ある。具体的に挙げると、丸の内の「新丸ビル」や有楽町と新橋の間「コリドー街」だ。どちらも金曜はカップルやグループ客で溢れ返っているので、男性や友達から指定されて行くことはあっても、おひとりさま自ら行く場所ではなくなっているのだろうか。

 下町では、「人形町」や「門前仲町」も今どきは、女性が1人で入れるようなバルの多い町の代表になっているが、票は集まっていなかった。まだ、浸透しきってはいないようである。そして何よりも意外なのは、六本木・麻布十番・西麻布が上位に登場しなかったこと。特に、「麻布十番」は、バルや気軽なカフェが多く、活気のある街という印象が強く、1位もあり得るかと思っていただけに不思議ではある。

 初めは、保守的なヒアリング結果だなあと感じたが、それなりに眺めながらこのランキングの理由などを考えてみるのは楽しかった。最後に、この大変なヒアリングに挑戦したR女史の感想を付け加えておこう。

 50人の傾向を聞いて、R女史が感じたのは、全体的に漂う「疲れるのが嫌だ」という傾向だったという。「会社の人と一緒よりも、友だちや1人が気楽でいい」。「大きな繁華街よりも、家の近くや人の多くない地元の気心の知れたお店が気楽」みたいな話がよく出てきたようだ。ニューヨークでは、気どったマンハッタンよりもコンフォート(*4)なブルックリンが人気といった傾向があるというが、東京でも同じような“コンフォート志向”の「遊ぶ街」=「新宿三丁目」、「赤羽」のような変化が徐々に始まっているのかもしれない。

(*4)コンフォート 編集者・菅付雅信氏の『中身化する社会』(2013年、星)によると、ネットの進化、SNSの爆発的普及を背景として、ウソや誇張はすぐに検証される時代になったと指摘。その結果、一時の流行に流されず、衣食住すべてにおいて人々がより本質を追求するようになると論じた。同書に頻出する「comfortl(コンフォート)」という単語は「本質的だからこそ心地がいい」という意味合いで使われている。

Text/速水健朗