2016.1.26

やりたいことをやりたい女子へ!
まずは「数字」と「好き」を探そう
『This!』編集部インタビュー第1回

通常業務も忙しい、経験も準備も足りないと上には判断される
――そんな状況でも仕事を成功させる秘訣を語っていただきました。

雑誌『This!』創刊記念インタビュー 第1回 This!編集部員(左から小林、金城、前列濱谷)

 昨年11月13日に創刊した小学館のファッションカルチャーマガジン『This!』。ファッション、漫画、書籍、演劇などジャンルも幅広く扱い、表紙の「水曜日のカンパネラ」のコムアイや劇団「マームとジプシー」の主宰・藤田貴大など今注目の才能が続々登場しています。さらには、湯山玲子、まんしゅうきつこなど、SOLOにもご登場いただいた方々のコンテンツも!

 20代~30代の女性を中心に、今を楽しく過ごしながらも、どこか漠然とした不安を抱えながらその解消策を探している…、そんなニーズを持っている女性に届けたいという思いで作られたという同誌。別々の部署にいる女性3人が集まって実現させた創刊の裏側について、全3回にわたってお話をうかがいました。

『This!』編集長は小学館の“半沢直樹”!?


――みなさん出版社にお勤めで本来の業務だけでもお忙しいはずなのに、そのうえで新しい雑誌(ムック)を創刊しようと思ったのはなぜなのでしょうか?

小林由佳編集長(以下、小林):私は児童書の部署で、これまで児童書のほかに『おじさん図鑑』や『あたらしいみかんのむきかた』など、自分が得意とするサブカルチャーっぽい単行本を“1人編集長”のようにつくってきました。
ただ、雑誌を読んで育ったことから「いつかはチームで雑誌もつくってみたい」という思いもあり、それが2人が集まってくれたおかげで実現しました。

濱谷梢子さん(以下、濱谷):私はもともと女性ファッション誌の部署に所属していて土日もないような日々でしたが、最近広告部に異動して以前よりは少し自分の時間がとれるようになったんですね。それで、通勤前の早朝に、4コマ漫画をインスタグラムに趣味でアップし始めたら、1週間で1000人もフォロワーが増えたんです。
そんな話をあるとき同期の小林にしたところ「そんなにやる気があるんだったら、一緒に雑誌をつくろうよ」と持ちかけられたんです。

小林:せっかく雑誌や本をつくれる出版社に勤めていて、色んな意欲があるんだったら公式に仕事としてもかたちにしたいと思って。
ですが、私たち2人だけだと分野の幅が少ないと感じ、そこで思い浮かんだのが『週刊ビッグコミックスピリッツ』の編集をしている金城でした。

金城小百合さん(以下、金城):私は一昨年中途入社してきたのですが、転職した頃すぐに小林から社内メールでランチに誘われて。それが初対面でした。小林は私が前職で担当した漫画作品を知っていて、仕事ぶりを評価してくれていました。
それで『This!』での漫画家さんの開拓を中心に、私もスピリッツの編集をしながら編集部員として参加することになったんです。


空気は読めないというか “読まない”


――小林さんが求心力となってプロジェクトが進んだんですね。

濱谷:小林は、弊社における「半沢直樹」的存在かも。
ヒット作を生み出しているから上司からの信頼も厚いけれど、いいものをつくるためだったら目上の人に対しても決して譲らないところがあります。『This!』の創刊を通すための会議でもすごかったよね。

小林:空気は読まないところがあるかもしれません。初めに雑誌の新創刊を会議で提案したときに、「雑誌をつくったことのない君にはまだ早い、もう少し準備をしてから出直しなさい」というような趣旨の判断をされたのですが、めげずにその1カ月後にまたすぐ企画を持って行きました。
そうしたら、「えっ!? この人また来た。空気読めないなぁ…」みたいな雰囲気に(笑)。でも、空気読んでも通せなければ意味ないですからね。

「雑誌をつくったことがないから無理」なのではなく、具体的にどういった部分がダメかを言ってもらえないことには前に進めないと訴えたんです。
すると、児童書の部署だけでなく、他部署や営業系や宣伝など雑誌畑の方にも検討していただくチャンスを与えられ、その場でようやく認められました。


感性は信じないけど「数字」や「好き」は信じられる


――味方の少ないアウェーな状況のなかでも、自分の企画を信じて突き進めるためになにを支えにしていますか?

小林:自分の感性はそこまで信じていなくて、大手書店が出しているデータなどを使って、ものすごく調べます。
自分の企画の類書が今どれくらい売れているのか細かく数字で分析していくことで自信を付けるんです。まずはそれをベースに、自分の好きなことをプラスするというか。
やっぱり好きなことしか本気で頑張れない部分もあるので、数字と自分の好きなこと、そのバランスが取れるところを狙っていきます。

濱谷:私の場合はひたすら「リサーチ」です。たとえば、今回出稿いただいたカシオさんの「BABY-G」の公式サイトではイラストレーターさんとのコラボレーションなどを盛んにやっていらして、それがポップで素敵だったんです。
きっと『This!』の目指す世界観をわかってくださるはず、とアプローチしました。

金城:でも、濱谷も「好き」が仕事の原動力の1つになっているよね。誌面にあるカルビーの「フルーツグラノーラ」でのプレゼンに同席しましたが、向こうの担当社に“フルグラ愛”をとつとつと語る姿がすごい熱量で。
まるで憧れの漫画家さんに仕事を依頼するときのような勢いだと思いました。

「スピリッツ」での通常業務でも、「好き」という気持ちは重要だと思っています。
たとえば、今回登場いただいた漫画家の鳥飼茜さんはほかの漫画誌で活躍する、個人的には大好きな作家さんです。
今回『This!』での執筆のお願いを機に初めてお会いしましたが、その際、鳥飼さんから「新しい表現方法を試したい」との要望を伺い、その解答である「鉛筆線」の原稿が最大限に映えるよう、原稿をいただたてからは紙やインクを選び直したり、印刷所に何度も出し直してもらったりしました。鳥飼さんからあがった原稿が素晴らしくて、なんとかそれに報いたくて執念的に頑張った。それが「好き」のなせる業だと思いました。

小林:記事でも広告でも意外にも「好きなこと」をやるのが仕事を成功させる一番の近道かもしれないという実感を持ちました。女性3人だけで雑誌を創刊するというと外部からは「健気」にみえることもあるようなんです、実はすごくたくましいメンバーなのに(笑)。
でも、自分たちのなかでは「健気」というよりは、客観的なデータと自分の好きなことへの思いをとにかく「一生懸命」に探っているという感覚があります。

【プロフィール】
小林由佳さん(こばやし・ゆか)さん
1980年生まれ。山と溪谷社を経て2007年小学館入社。児童・学習編集局 図鑑百科編集室所属。
<主な担当書籍>『あたらしいみかんのむきかた』(岡田好弘 作・神谷圭介 絵)、『おじさん図鑑』(なかむらるみ/絵・文)、『図鑑NEO花』、『図鑑NEOポケット植物』以上、小学館。『おとなのおりがみ』(山と溪谷社)。

濱谷梢子(はまたに・しょうこ)さん
1979年生まれ。リクルートを経て2007年小学館入社。女性誌局編集部を経て、現在は広告局所属。
<主な担当雑誌>『Oggi』(編集部、後に広告担当)、『AneCan』(編集部)、『Domani』(広告担当)以上、小学館。『ゼクシィ』(編集部、リクルート)。

金城小百合(きんじょう・さゆり)さん
1983年生まれ。秋田書店を経て2014年小学館入社。第三コミック局 ビッグコミックスピリッツ編集部所属。
<主な担当漫画>『アイアムアヒーロー』(花沢健吾)『プリンセスメゾン』(池辺葵)以上、小学館。『cocoon』(今日マチ子)、『花のズボラ飯』(久住昌之 原作・水沢悦子 漫画)以上、秋田書店。


Text/皆本類

客観的なデータの分析を大事にしつつ、「好きなこと」をするのが仕事の成功させる一番の近道かもしれないという予感を感じたという『This!』編集部の面々。ただ、本当に「好きなこと」とは一体どのような基準で測られるものなのでしょうか。次回は、「好きなことで仕事する」の本質に迫ります。


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