2017.11.7

旅行は間違いなく価値観を変える。
少しずつ変わっていった
私の価値観

旅する理由に「価値観を変えたくて」と語る学生。
彼らに感じた違和感の正体とは。

「価値観を変えたくて」の旅行者に思うこと

旅する女性の画像 by rawpixel

「価値観を変えたくて、一人旅しているんですよ」と言われて、「またか」と思った。
インドに行くと、この価値観を変えたくて旅行している就職活動前の大学生と出会い、話す機会が必ずある。インドには、野良牛がいて、大きな道路や路地裏、店の前、至るところで姿を見ることができる。その野良牛に出会うのと同じくらいの確率で、価値観を変えたいと話す大学生に会っている気がする。

 以前もお伝えしたように、この前まで有給休暇の消化期間をいただいて、2週間ほどインドのラダック地方を見て回った。タクシーをたまたまシェアしたハンガリー人から、少し離れた村で祭りがあることを聞き、急遽スケジュールを変更して「デスキット」という村に向かった時の話だ。
こんな時期の、こんなところに何故日本人が…と思って話かけてみると、どうやら就職活動前に大学を休学して、約4か月間で世界を旅しているらしかった。
「価値観を変えたくて」「何かを吸収したくて」と普通の顔をして言えてしまう大学生に出会う度に、不思議な気持ちになる。価値観が変わるのは、結果の話であって、目的にするにはなんだかおかしい気がして。自分の中身を変えるためだけに、こんな僻地にまで足を伸ばせるのも、なんだか違和感を覚える。

 こんなことを言うのは少し恥ずかしい気もするけれど、私の安い価値観は、間違いなく旅行で激変したと思っている。大学生の言葉に、おかしさみたいなものを感じながら、私だって同じようなものだった。
私の旅行の目的は特になくて、「なんとなく楽しそうだから」「行ってみたいと思ったから」程度だし、意識も低ければやる気もない。価値観を変えたくて日本国外に出ている人と比較すると、きっと頭に詰め込んでいる情報量も少ないだろうし、全然何の役にも立たないようなことばかりを覚えて帰国している気すらする。

 「旅行に行くと価値観が変わる」という言葉に対して、「そんな価値観しか持っていないのかよ」と毒づく人がいるけれど、大抵はあまり国外に出たことのない人が言っているように思う。私の人生観や性格は、旅行中に色々な人に出会い、たくさんの場面で少しずつ決断し、変化していった。旅行は、間違いなく人の価値観を変えると思っている。

今までにないものに触れた瞬間、
価値観は少しずつ変化していく

人が考えを変えるきっかけや自分を客観視する時間、自分の常識が覆される機会というのは、そう滅多に訪れるものではない。例えば、知らなかった世界に飛び込んでみたり、人と出会って会話をしたり、新しいことをはじめてみたりと、今まで自分の持ち合わせていなかったものに触れた瞬間に、価値観は少しずつ変化していくのだと思っている。

 絶対に海外である必要はないけれど、旅行は歩いているだけで衝撃を受けることがある。今回の野良牛だってそうだ。日本では見られるものではない。人間としての扱いを受けていない物乞いの人達、当然のようにポイ捨てをする人、目や耳に入る全てが真新しい環境で、自分に何の変化も訪れないだなんてありえないんじゃないだろうか。

 6時間くらいバスに揺られながら、隣の席に座った地元の女の子とポテトチップスを分け合ったこと。チャイ屋で知り合ったネパール人の女の子に日本の文化を説明したこと。現地でできた友達にバイクの後ろに乗せてもらって、綺麗な景色を見ながらドライブをしたこと。文字にすると大したことないのかもしれないけれど、色々なところで偶然出会った人に優しくしてもらったり、話をしたりすることによって、気づかされることがたくさんある。

 山道を歩いていると、たまたま僧侶に声を掛けてもらって、一緒にクリケットをしにいく機会があった。その中に一人、とても流暢な英語を話す方がいて、ラクダを見に行くことになった。歩きながら、ラダックのことや僧侶の生活など、色々なことを教えてもらう。
その会話の中で、「僕は国外に行ったことがないんだ。日本は、とても大きな国なんだよね?旅行には行けないから、想像するんだ」と言われた。 さり気無い一言だったけれど、衝撃を受けたのをよく覚えている。何が幸せで、どんな人生が一番いいんだろう、と思った。どこへも行けない僧侶の彼は、気軽にどこにでも行ける外国人の私を、どう見ているんだろう。おそらく自分よりもお金を持っていて不自由していないであろう外国人の私に対して、優しく接してくれるのはなぜなんだろう。決して尋ねたりはしないけれど、数日程ずっと考えていた。

 今回あったことも、色々なことを考えるきっかけになったし、おそらく忘れることはないんだろう。何かふとした瞬間に思い出して、「あんなこともあったんだし、また仕事を頑張ろう」と思う日も来るかもしれない。
旅行にでることを「面倒くさいなあ」「死んだらどうしようかなあ」と考えることもあるけれど、その不安を吹き飛ばすくらい楽しい面が大きい。色々な人たちとの出会いや今まで気が付かなかった発見、自分の知らなかったことに驚き、感動するために、多分私はこれからも時間を見つけて様々なところに行くのだろうと思う。

Text/あたそ

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誘いたい、だけど面倒くささが勝ってしまう。本当にしたいことをするだけでも、私たちには時間がないのだから。