2017.11.25

目覚めよ本能。
「自意識過剰」を手放せば、
心の重荷がちょっと減る

究極のミニマリスト・稲垣えみ子著『寂しい生活』を読んで、
チェコ好きさんが感じた「自分を手放す」ことの必要性。

目覚めよ、本能

光の射す方へ向かって歩く女性 by Kyle Broad

「断捨離」や「ミニマリスト」といった言葉、正直にいうと登場当初は、ブームが続くのも数年間でその後はすっかり忘れ去られるものと思っていました。しかし意外にも(?)しぶとく残り続け、今日もいろいろな人がいろいろな指南をしてくれています。

 未だに多くの人が、部屋にある不用品の整理やお掃除に夢中になっているようだし、私も20代半ばくらいにクローゼットの洋服をガサッと整理してからは、あまり家に不用なものを溜め込まないよう心がけるようになりました。

 そんな中、「断捨離」「ミニマリスト」のさらに上を行く強者、元朝日新聞記者で、アフロヘアーが特徴の稲垣えみ子さんから見る景色はどんなものだろうと思い、『寂しい生活』という本を読んでみました。

『寂しい生活』稲垣 えみ子(著)東洋経済新報社 『寂しい生活』/稲垣 えみ子(著) /東洋経済新報社

稲垣さんは、東日本大震災の原発事故をきっかけに、徹底した節電生活を始めたという方。「断捨離」などというレベルではなく、冷蔵庫も洗濯機も手放し電気代は月数百円以下、さらにガス契約までやめてしまったというから驚きます。
そしてそんな生活を一人で続けているうちに、稲垣さんは「自分のこととかどうでもよくなっちゃった」らしいのですが……。

動物的本能を取り戻すと、
自分のことはどうでもよくなる

「自分のこととかどうでもよくなっちゃった」というのはもちろん、部屋が汚くなったとか、身なりが清潔でなくなったとかの、セルフネグレクトのことではありません。
「自分が」幸せになりたい、「自分が」成功したい、「自分が」人に認められたいなどの欲望が薄まり、他の人がどうしているか、きちんと幸せでいるか、そっちのほうばかり気にかかるようになったといいます。

 稲垣さんによると、電気代を月数百円にまで抑えるというのはやはり小手先の技術では上手くいかなかったようで、常に電力を消費している冷蔵庫を捨てるとか、仕事が終わって家に帰ってきても部屋の照明を一切つけないとか、根本的なところから生活を変える必要があったみたいなんです。

 すると、たとえば照明を一切つけないとなると、帰ってきて鍵を開けたとき部屋が真っ暗なので、目が慣れるまでしばらく玄関にたたずんでいなければなりません。でも逆にいうと、しばらくたたずんでいれば暗闇でも目が慣れてくるので、お風呂に入るとか着替えるとかの日常的なことは、照明がなくても普通にできるらしいのです。

 このエピソードで私が思い出したのは、昨年バリ島を旅したとき、ウブドで田んぼのど真ん中にある宿に泊まったときのこと。
田んぼのど真ん中なので、電灯も周囲の店の明かりも一切なく、夜は暗い畦道の中を一人で歩いて戻らなくてはならなかったんです。iPhoneの懐中電灯で道を照らしていたとはいえ、ねばり付くような暗闇は本当に怖くて、周囲で動物や虫の鳴き声がするたびにビビっていました。でもそのときの、自分の五感がフルで動く感じや、危機意識のあまり動物の本能が少し戻ってくる感じは、ちょっと楽しかったんですよね。

 なぜ生活の中で様々なものを手放すと「自分が」という意識が薄まるのか、その原理の詳しいところはよくわかりません。でも、「パートナーがいない」「友達が少ない」というだけで「私は孤独だ……」と思うのはもしかしたら早合点で、私たちは実は、本当にいろいろな命に囲まれて生きています。
暗闇の中を歩いたり、冷蔵庫や暖房器具を捨ててみたりすると、動物的本能が目覚めるせいかそのことに気付きやすくなるのでしょう。

「自分」を手放せたら、心がちょっと軽くなる

久々に会った人に対して、「あれ、この人、前より明るくなったな?」と感じたことってありますか? そういうとき詳しく事情を聞いてみると、状況はさまざまだけれど、総合すると、稲垣さんが言うように「自分のこととかどうでもよくなっちゃった」となっているケースが多い気がします。出産したとか、不毛な関係が続いていた恋人とお別れしたとか。
「自分が」という意識を捨てられたとき、私たちはもしかしたら、今までより少し自由に生きられるのかもしれません。

 かくいう私はまだまだ「自分が」ばかりの人間なので偉そうなことは言えないですが、まわりの人の幸福を願うって、心が安定していないとできないことです。

 矛盾した言い方だけど、一人で生きているからこそ、一人で生きているわけじゃないことを、忘れないようにしたほうがいいのかもしれません。

Text/チェコ好き

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つぶやけばすぐ反応が返ってくる現代だからこそ、一人で温め続ける思いがあれば尊い。

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