2018.1.30

「余り者同士で付き合っちゃえ」に
いいともいやとも言えなかった私

「余り物同士で付き合えば?」
恋人がいることが普通で、いないと疑問に思われる。
そんな風潮に対してあたそさんが抱く思いとは。

「余り者同士で付き合っちゃいなよ」に巻き込まれて

女性が海岸で座り込む画像 by Pixabay

「恋人がいない」と言えば、「なぜ?」と尋ねられ、そして「気になる人がいない」と言っても、「どうして?」という質問が返ってくる。
同年代のまだ結婚していない人達を外側から見ていると、恋人がいることは普通で、恋愛をしていることは当たり前。その普通と当たり前からなんとかはみ出さないように、私はいつも「出会いがなくて困っているんですよね。誰か、いい人がいたら紹介してください」という一言で乗り切り、恋愛はする気満々なんだけれど、あいにくいい人がいない、というスタンスを取って乗り切っている。

 いや、恋愛する気がないと言えば嘘になるんだけれど、今の私からは遠ざかり過ぎてしまっている。「空を飛びたいな」とか「アラブの石油王に突然100万円くらいプレゼントされないかな」とか「朝起きたら、キッチンで竹内涼真がエッグベネディクトを作ってくれていて、あれ? 私たちいつの間にか付き合ったりしてる……? ってなったりしないかな」とか、有りもしない妄想の少し手前くらいに「恋愛」という果てしなく高い壁があって、超える努力もしなければ、突き破っていく技術も持ち合わせていなくて、膝を抱えながらじーっと見つめている感じ。

 そんな風に毎日を過ごしていると、「余り者同士で、ちょうどいいから付き合っちゃいなよ!」という、周りの人間から見たらかなり盛り上がるけれど、当事者同士は大迷惑を被る事態に巻き込まれたりする。それがつい最近のことで、3か月ほど前に働きはじめた会社での出来事だった。

 私はもうこういう展開にすっかり慣れていて、迷惑もクソもなく、ただへらへらしながらやり過ごしている。その私とくっつけられようとしている余り者の男性は私の先輩で、仕事でも多少の関わりがある人だった。そのため、なんとなく真正面から拒否することもできないし、当然そのまま付き合うわけにもいかない。こういうのはあからさまに嫌な顔をしても、全面拒否してもだめだ。あくまで自然に受け流す。周囲の人間が飽きるまで、なんでもない顔をして、ただずっと待っているだけしかない。

「いや」とも「いい」とも主張できないまま

今私が勤めている会社は上下関係があまりなく、社員同士で飲みに行くこともよくある。まだ入社して間もないけれど、お酒が好きであることが表面化してしまっていて、月に1度以上のペースで必ず社員の誰かと食事をしたりお酒を飲んだりしている。
そしてついに先日、社長と余り者の男性、そして余り者の私で飲みに行くことになってしまった。

 社長はくだらない話が好きな人で、仕事の話を挟みながら、終始バカみたいな話をして3人で3時間くらいゲラゲラ笑いながら過ごしていた。真面目な話もできたし、距離も少し縮まったような気がする。楽しかったし、よい飲み会だったと思う。でも、その時も「あれ?2人は付き合ったりしないんですか?」とか「うちの会社は社内恋愛を推奨しているんですよ」とたまに言われたりして、いつもみたいにへらへら笑って過ごせばよかったんだけれど、やっぱりほんの少しだけ胸の辺りから歪んでいくような気持ちになっていた。余り者の男性だって困ったような顔をしていて、とても申し訳なくなる。

 お酒を飲みながらとはいえ、3時間も話して盛り上がるくらいなんだから、まったく気が合わないわけではないだろう。仕事もできるし、気も利くし、会社ですれ違うと話かけてくれたりするし、余り者の男性はすごくいい人なんだとは思う。
私だって、結婚適齢期で余りに余っている。恋愛というどうにもできない壁をずっと眺めているだけだと思っていたのに、突然強力な助っ人が現れたような気分だ。理想もグッと低くして、妥協できるところですればいい。人を好きになるなんてきっと簡単で、自分で自分に催眠術をかければいい。錯覚でも思い込みでも妄想でもなんだっていい。そんなの、ずっと前から、余り者の男性が私の目の前に現れる前から分かっていたことだった。

 でも余り者の男性は、女性が傷つくこと、気にしているところを平気で口に出し、そしてことあるごとに性差を付けたがる人だった。例えば、太っている女性に向かって「ブタに似ているね」とか、お弁当を作ってくる人に「女性らしくていいね」と言ったりとか。些細なことかもしれないけれど、私はどうしても気になってしまう。こういうところにこだわりを持つのが、私のダメなところではあるんだろうけれど、やっぱりどうにもならない。このからかいの波が引いて、周囲の人のおかしな方向に伸びてしまった興味や関心がなくなるまで、一体どれくらい時間がかかるのだろう。

 本当は、こうしておかしな出来事に巻き込まれるのも嫌なのに、「いい」とも、「いや」とも言えない。気にしないまま過ごしていくのが大人で、最もいい方法なのかもしれないけれど、自分が嫌なこと、放っておいて欲しいことへのきちんした対処法を考えあぐねている。どうしようのない自分に苛立つだけで、何もせずただじっと時間が経つまでの時間をただ待っている。

Text/あたそ


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「人と仲良くなるのは得意だった。でも高校生の私はずっとひとりだった。」